簿記で出てくる「しーくりくりしー」とかって、何をやっているのかさっぱりわからないや。とりあえず覚えておけばいいって言われたけど・・・。
簿記3級の勉強を進めていくなかで、呪文のように出てくる言葉が、この「しーくりくりしー(仕繰繰仕)」です。これって、そもそも何をやっているか、何を処理しているのか、なぜこの仕訳が必要なのか分からずに、パターンで暗記して解いている人が、ヤバいぐらい多いようです。
とは言いながらも、特に理解できないことをやっている訳ではありません。このような、一見意味不明な仕訳を理解していくことで、簿記の知恵を深める事ができます。
「しーくりくりしー」とは
結論:しーくりくりしーは、仕入れの勘定科目の金額を、「売上に対応する仕入れの金額」に修正する仕訳です。
この「しくりくりし」は何をやっているかというと、「売上原価を計算」しています。売上原価って何かというと、売上に対応する仕入れた商品になります。詳しい話は以下でご説明しますね。
まず、前提条件として、この「しーくりくりしー」を仕訳にすると
(仕入) | ○○○ | / | (繰越商品) | ○○○ |
(繰越商品) | ○○○ | / | (仕入) | ○○○ |
となりますが、理解しやすい2行目の
(繰越商品) | ○○○ | / | (仕入) | ○○○ |
「くりしー」から説明していきます。
1年目
まずは、事業を始めた1年目になります。
市場で1個60円のリンゴを、10個600円現金で仕入れました。これを仕訳で表すと
(仕入) | 600 | / | (現金) | 600 |
そのリンゴを、お客さんに3個売って、お客さんから現金300円をいただきました。これを仕訳で表すと、
(現 金) | 300 | / | (売上) | 300 |
売上は収益で、仕入は費用となりますので、そのままで決算を迎えて損益計算書を作成しますと、
売 上 300円
仕 入 600円
売上総利益▲300円
と利益としては、300円のマイナスになってしまいます。確かに、現金の残高は600円で仕入れて、300円で売ったため、現金はマイナス300円ですが、仕入れた単価より高くで売ったのに損が出てしまうのは、ちょっとおかしいですよね。
費用収益対応の原則
会計のルールで、「費用収益対応の原則」というものがあります。
簡単に言いますと、「費用として計上できるものは、収益に対応するものだけ」ということです。この、売上300円つまり、3個のリンゴに対応する費用というのは、いくらになるでしょうか?
この3個のリンゴは、1個60円で仕入れまして、3個で180円となります。3個のリンゴに対応する仕入れの金額は180円です。そうすると、費用に計上できるものは180円になります。
また、のこり7個のリンゴは手元に残っていますよね。りんご7個はまた来期に売るために持っていますので、「来期に繰り越して売る商品」になります。
つまり、残った1個60円☓7個=420円は、売上に対応する仕入とはならず、残った商品として、次期に繰り越すため、貸借対照表の資産として表示させなければなりません。ですが、このまま仕入に残っていると、損益計算書に表示されてしまいますので、「しくりくりし」の2行目の仕訳である
(繰越商品) | 420 | / | (仕入) | 420 |
の仕訳で、残っているリンゴを繰越商品に振り替えます。これが「しーくりくりしー」の2行目の仕訳の意味になります。
この仕訳を切ることによって、損益計算書は
売 上 300円
仕 入 180円
売上総利益 120円
となります。また、貸借対照表の資産には
繰越商品 420円
が残って決算を迎えます。
2年目
ここからは、年度が変わって翌年度である2年目になります。
前年度から繰り越されたリンゴを、お客さんに7個全て売って、お客さんから現金700円をいただきました。これを仕訳で表すと、
(現 金) | 700 | / | (売上) | 700 |
この翌年度では、リンゴの仕入れを行いませんでした。それで、なにもしないで決算を迎えたとしたら
売 上 700円
仕 入 0円
売上総利益 700円
となります。今度は、商品を売ったにもかかわらず、仕入れが0円となりますので、利益が出すぎてしまいます。
費用収益対応の原則から言いますと、そのリンゴの売上7個に対応する費用を計上しなければなりません。その7個のリンゴは、繰越商品として前年度から繰り越されてきました、繰越商品の420円になります。
そうすると、貸借対照表に残っている繰越商品420円を、仕入の科目に振り替える必要があります。その仕訳が、
(仕入) | 420 | / | (繰越商品) | 420 |
それにより、損益計算書は
売 上 700円
仕 入 420円
売上総利益 280円
となります。また、貸借対照表は
繰越商品 0円
(420円ー420円)
となります。
つまり、費用収益対応をさせて、仕入の金額に前年度の商品を足して、翌年度に繰り越す商品を引く事によって、仕入の金額を、売上に対応する金額に修正することができます。
売上原価とは
この売上に対応する仕入れの金額を「売上原価」と言います。売上に対応する原価(費用)として理解しておきましょう。仕入れの勘定科目を図解しますと
貸借は一致しますので、算式で表すと、
期首繰越商品+当期仕入高ー期末繰越商品=売上原価
となります。
仕訳でまとめますと
仕 入 ◯◯◯/繰越商品 ◯◯◯
(期首繰越商品を仕入勘定に加える)
繰越商品 ◯◯◯/仕 入 ◯◯◯
(期末繰越商品を仕入れ勘定から引く)
ということで、「しーくりくりしー」の仕訳になります。
皆さんは、理解できましたでしょうか?
まとめ
費用収益を対応させるために、この「しーくりくりしー」の仕訳を切っています。たったこれだけの話ですね。
こういう仕訳を、「理解」せずに「暗記」に走ってしまうと、問題は解けるけど意味がわかっていないということで、少しひねられると分からなくなります。
しっかり理解するためには、通信教育がベストですが、お金がかかるため二の足を踏んでいる人も多いと思います。
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